『五元集』 秋 の 部  へ|へ|へ(只今未整理増補中)

  待宵や明日は二見へ道者われ  489

   雲井にかけれの絵に
  傘持は月に後るゝすかた也   490

  木母寺に歌の会ありけふの月  491

  名月やこゝ住吉のつくた島   492

   名所月
  小くらから古郷の月や明石潟  493

   
  駒とめて釜買独けふの月    494

  川筋の関屋はいくつけふの月  495

  新月やいつをむかしの男山   496

 

  水相観の絵に
我書てよめぬ物有水の月
名月や居酒のまんと頬かふり
得蟹無酒
蟹を画て座敷這する月み哉
名月や畳のうへに松の影
  雨
納屋に何雨吹晴てけふの月
名月や竹を定むるむら雀
夢かとよ時宗起て月の色
  あつたにて
更々と禰宜の鼾や杉の月
  紀川 いくせもあり
たつか弓箭に行水やみかの月
  所思
いさよひも心つくしや十四日
名月や金くらひ子の雨の友
闇の夜は吉原はかり月夜哉
月出て座頭傾く小舟かな
人音や月見と明す伏見艸
  維摩のさん
山のはは大衆也けれ床の月
  張良図
胸中の兵出よ千々の月
布袋の月を掬ル絵に
有てなき水の月とや爪はしき
  寺
寺の月ふたう膾は葉にもらん
名月やかゝやくまゝに袖几帳
烏帽子屋はゑほしきて見よけふの月(頭注、木かくれてのみ)
  閑倚橋
猿這に我とらんとや橋の月
  含秀亭
富士に入日を空蝉やけふの月
  風雨
雷に揖はなひきそ月見舟
  小野川けんきやうに餞
入月や琵琶を袋におさめけん
  三月糧をつゝむといふに
名月や十歩に銭を握リけり
  巴江
声かれて猿の歯白し峰の月
舟中にほていを書て袋に
そへたる杖の揖に似たるを
月見るも杖につなける小舟哉
  琵巴(琶)をよむ
  良夜に比巴(琵琶)を興して爰も潯
陽の客と思ひなす酒をそへ
灯を遠めて深更いやましに
村雨の心をはらし私語の耳
をそはたつめる感ありかの十三
  より学得てし曹保は秘曲
  もさそな人を泣しむと聞えつる
  すさひもことはりにこそと云に
  其座閑なる聞て哉と声をひ
  そむるものはなくて長うなれと
  枕を投出すかく無風情の人
   一芸ありやといへは
十五から酒をのみ出てけふの月
  あさつま舟につゝみを入て
  月をみる女の水干に
  扇かさしたる絵に
おもふ事なけふしは誰月見舟
  所懐 京にて
いはぬ事三ツ心に名有けふの月
母と月見けるに
ねられねは雨元政の十三夜
旅泊
うれしさや江尻て三穂の十三夜
薬研ては粉炊おろすか後の月
住の江や夜芝居過て浦の月
白玉に芋を交はや滝の月
後の月上の太字の雨夜哉
しかそすむ茶師は旅ねの十三夜
後の月躍かけたり日傘
  十三夜を
やよや月夜は物なき木挽町
  閏十五夜 前の良夜は江戸雨ふりけれは
御番衆は照月を見て駿河舞
  平家落足の屏風に
宿なしのとられて行し月見哉
  柴ふるひ荷へる人に
名月や皺ふる人の心世話
名月や人を抱手を膝頭
こよひ満り棹のふとんにのる烏(頭注、待乳山)
  契不逢恋
閨の灯に光る座頭や袖の月
  一休の狂詠自画を写して
律師沙弥相剃をして月み哉(頭注、甲申)
  松前のきみに申送り侍る
こさふかは大根て消さん秋の月
十六宿は儒者と名乗し姿也
漬蓼の穂に出る月を名残かな
  同十三夜
笈の菓子古郷寒き月見哉
  病中制禁好
橋桁の串海鼠はつすや月の友
  新宅吟
汐汲をかゝへてみはやけふの月
  宗因先月をうるの句をとりて
芋は_凡僧都の二百貫
  君かいひけんことのはといひ
  すてゝ出たりけんあした
物かはと青豆うりか袖の月
  鐘声客船
名月や御堂の鼓かねて聞
いねふるな松の嵐も江戸の月(頭注、遊子)
雁鳴や弓地をみれは昏の月
  玉津島帰望
わかはみつ更井の月を夜道哉
いさよひや竜眼肉のから衣
  上交語上
平家也太平記には月も見す
  吉野の山ふみせしころ
  こよひたれすゝふく風とよまれし
  世尊寺に篠分て
頼政の月見所や九月尽
  九月廿七日の月を惜
見し月や大かた晴て九月尽
  不ト家句合
文月や陰を感する蚊屋の中
七夕や暮露よひ入て笛を聞
星合やいかに痩地の瓜つくり
  雨後
鵲や石をおもしの橋も有
星合や山里持し霧のひま
  新居
塀梢かけてかよへや銀河
天川けふのさらしや一しほり
  青山辺にて
踊子を馬ていつくへ星は北
  侍座
刺鯖も広間に羽をかはしけり
笹のはに枕つけてやほしむかへ
二星恨む隣のむすめ年十五
かさゝきや丸太の上に天川
星合や女の手にて歌は見ん
ほしあひや暁になる高灯籠
丸腰の冶郎笠とれ星むかへ
  比叡にのほりて
星あひや双林塔の鈴の音
橋と成烏はいつれ夕からす

  七月朔日餞粛山子
かけて待伊与簾も軽し桐の秋
葛花や角豆も星の玉かつら

小娘の生さきしるしかけ躍
小屋涼し花火の筒のわるゝ音
鵜さはきも逆櫓もやるや花火売
玉川の水筋
かれたるとし
水汲の暁起やすまふ触
増上寺晩景
馬老ぬ灯籠使の道しるへ
七夕うたつくしなといふ草紙
行水に数かくよりも鷺に傘
  弄化生
あひろの子字ルといなや天川
  棚経よみにまいられし僧の
袖よりおひねりを落しける
かの授記品の有無価宝珠
と説せ給ふ心をおもひて
衣なる銭ともいさや玉まつり
  永代島にあそふ
遊山火を芦のははけや玉迎
玉まつり門の乞食の親とはん
きのふみし人や隣の玉まつり
  得斗酒
淵明か隣あつめや生身玉(頭注、陌上塵)
棚経や此あかつきのあかの水
見る人も廻り灯籠に廻りけり
送り火や定家の煙十文字
  千之と黄蘖にあそふ
盆前をのかれし山の二人哉
稲つまやきのふは東けふは西
  妻におくれて後
   子にもはなれたる人に
いなつまや思ふいふも紛るゝも
伊勢の鬼見うしなひたる躍哉
身にしむや宵暁の舟しめり
  舟興
壱両か花火間もなき光哉
扇的花火たてたる扈従哉
  妓子万三郎を悼て
折釘にかつらや残る秋のせみ
鬼灯のからを見つゝやせみの空
悼コ斎
其人の鼾さえなし秋の蝉

投られて坊主也けり辻相撲
よき衣の殊(ママ)いやしやすまひ取
ト石やしとゝにぬれて辻相撲

神のため女も売や相撲札
相撲気を髪月代の夕かな
山城かまた鋳ぬ形や鈷西瓜
  遊弘福寺
木犀や六尺四人唐めかす
  中の郷にて
幸清か霧のまかきや昔松
  雨後 二句
あまかへる芭蕉にのりてそよきけり
殊(ママ)晴て雷朝顔にいさきよし
蕣の日陰またあり中老女
舜に立かへれとや水の物
蛛のゐや薄をかけて小松原(頭注、いせせにかけ松)
  種竹三竿
竹の声許曲かひさこまた青し
つほみとも見えす露あり庭の萩
長野豊受野をわたりて
角文字やいせの野飼の花薄
岡釣のうしろ姿や秋の暮
芦の穂や蟹をやとひて折もせん
  客至
_油汲小屋の堺や蓼の花
  暮蕣といふを
朝顔に花なき年の夕哉
花もうし佐野の渡の蓼屋敷
酢を乞あり隣の蓼の花盛
  三遶奉納
早稲酒や稲荷よひ出す姥かもと
露の間や朝茅原へ客草履
頬摺やおもはぬ人に虫屋迄
  野店無肴核
足あふる亭主にとへは新酒哉
酒買に行か雨夜の雁孤ツ
浅茅原にて
化野や焼もろこしの骨はかり
  春日法楽
今幾日秋の夜詰をかすか山
  四所の宮人夜ことにとのゐして
  戌の刻をかきりとし侍る也
  野外夕虫といふ題にて
蜻蛉や狂ひしつまる三日の月
  
相模川洪落水接天
狼の浮木に乗や秋の水
  二挺立の帰棹
鬢を焼枕つれなし星の露
鶏頭や松にならひの清閑寺
  こまひきの題にて
甲斐駒や江戸へ_と柿ふたう
駒曳や岩ふみたてゝ元筥根
  みの路に入て 素牛にて
砧きかん孫六屋敷志津屋敷
  ある長者のもとにて
中の間にねぬ子幾人さよ砧

和水新宅
さい槌の音を仕まへは碪かな
奥好の殿やうつらんから衣
  遠里小野の虫聞にまかりて
霧雨は尾花かものよ朝ほらけ
茸や御幸のあとの眉つくり
  あたかのわらへに扇
  とらするゑに
関守の心ゆるすや栗かます
  大和路の女に物いひて
泊瀬女に柿のしふさを忍ひけり
  嵯峨遊吟
清滝や渋柿さはす我心
茸狩や山のあなたに虚労病
  女中の茸かりを
茸狩や鼻の先なる歌かるた
  舟中
ない山の富士に並ふや秋の暮
秋山や駒もゆるかぬ鞍の上
稲葉見に女待そへすみた河(頭注、隅田高橋之記)
秋の空尾上の杉をはなれたり
  餞秋航
諸鶉駒はまかせぬ脇目かな
松虫に狐を見れは友もなし
  柴雫といせをかたりて
故郷も隣長屋かむしの声
すむ月や髭をたてたる蛬
  夜過山
鈴虫や松明先へ荷はせて
山川や梢に毬はありなから
たはこ干す山田の畔の夕日哉
  二見にて
岩のうへに神風寒しはな薄
  長谷越
山畑の芋ほるあとに伏猪かな
川_の香になかるゝや谷の水
  遠州二股川を河舟にて
  下り侍るに推河脇といふ所
  逆水大切所をこえて
打櫂に鱸はねたり淵の色
  一夜前栽といふ事を
御城へは何に入やらをみなへし
  功悠亭にて
日盛を御傘と申せ萩に汗
  専吟庵
秋薄むすひ分はやササ菩薩
  暁松亭
獅子舞の胸分にすな庭の萩
  楓子亭
ねたり込は誰の内儀そはきに鹿
  井筒を略したる画に
いそのかみ竹輪にむすふ薄かな
  田家
庭鳥の卵うみ捨し落穂かな
敷台に稲ほす窓は手織哉
餞青流難波
芦刈のうらを喰せて砧哉
  隣家にもと結こくを
大絃は晒す元結に落る雁
元結のねる間はかなし虫の声
  太郎二郎の貝をとりて
かけ出の貝にもてなす新酒哉
  霧香月灯を憐
古寺や渋紙ふまん所たに
  駿府御番に旅たち給へる人に
たか上に賤機ころも木渋桶
  同仙石玉芙公御加番に餞別
萩すりや傘すかす昔鞍
  あふひのうへの後
   花子喜太郎
三栗のうはなり打や角被
  在原寺にて
僧ワキのしつかにむかふ薄かな
松のはにその火先たけ薄_油
  感微和尚に対す
そは灯や鶉衣に玉たすき
品川泛鉤
雁の腹見送る空や舟の上
白雲に声の遠さよ数は雁
  むすめ喰そめに
鵙啼や赤子の頬を吸時に
順検にとはす語や百舌の声
泥亀の鴫に這よる夕哉(頭注、曳尾)
  餞少長上京
うら枯に花の袂や女ほれ
  如是果のこゝろを
二子山二子ひろはん栗のから
尾州浄教寺にて
燕もお寺のつゝみかへりうて
宵闇や霧のけしきに鳴海かた
  鹿の一声といふ小うたのさんに
更かたを誰か御意得て鹿の声
さほしかや細き声より此流
  木辻にて
門立の袂くはゆる男鹿かな
小原女や紅葉てたゝく鹿の尻
秋葉禅定の時
合羽着て鹿にすかるやあきは道
  下山
かし鳥に杖を投たるふもと哉
芭蕉翁嵐蘭を悼をめる詞あり
嵐蘭一子孤愁をあはれむ
芋の子も芭蕉の秋を力かな
  めおとむつましくて年比
  子なき事をなけく人に
おもふ葉は思ふ葉にそへ秋菓

  二月堂にまいりけるに七日
  断食の僧堂のかたはらに
  行ふこゑを聞て
日の目見ぬ紙帳もてらす_哉
  甚五左衛門にあひて
此風情狂言にせよつたの道
  産寧坂くたりて
菊紅葉鳥辺野としもなかりけり
戸越山庄
むら_荏の実をはたく匂哉
かつちりて翠簾に掃るゝ_哉
  あさふ山庄
谷へつけ鹿のまたきの_狩
  三条橋上
片腕は都にのこす紅葉哉
  ある人の従者に
紅葉にはたか教えける酒のかん
山姫の染から流すもみち哉
  筥根
杉の上に馬そ見えくる村紅葉
高雄にて
此秋暮文覚我をころせかし
  泊瀬にて
_見る公家の子達かはつせ山
  山行
道役に紅葉はく也さよの山
  いせにて
紅葉して朝熊の柘といはれけり
南天やをのかみほとの山のおく
南天の実を包めとや雁の声
南天や秋をかまゆる小倉山
  うつの山の絵に
笈の角梢の蔦にしられけり(頭注、旅思四句)
七十の腰もそらすか鳴子曳
いつしかに稲を干瀬や大井川
山の端をやんまかへすや破れ笠
  水郷
唐秬を流るゝ沓や水見舞
  富士
笠取よ富士の霧笠時雨笠
朝霧や空飛夢を不二下風
  背面達磨を画て
武帝には留守とこたえよ秋の風
  旅思 二句
みゝつくの独笑ひや秋の昏
みゝつくの頭巾は人にぬはせけり
召ことに馴し子方や花薄(頭注、本多下総守との御侍宴)
うら枯や馬も餅くふうつの山
  後園
いきぬけの庭や鎧摺菊の花
手の内の_こほれてきくの露
  旅行
駕籠に濡て山路の菊を三島哉
しほらしき道具何ある菊の宿
  荷兮か従者たんさくほしかるに
土器の手きはみせはやけふの菊
けふの菊小僧てしるやさらさ好
きくの香や瓶よりあまる水に迄
白鶏の碁石になりぬきくの露
雨重し地に這菊を先折ん
こは誰に雨ののこりの袋菊
  素堂 残菊の会に
此菊に十日の酒の亭主あり
  画菊
きく白く莟は後にかゝれたり
  菜苑
菊を切跡まはらにもなかりけり
水鼻にくさめ也けり菊_
 病起 千山ヨリ菊ヲ得て
大母衣うしろを押や瓶の菊
三島にて重陽
門酒や馬屋の脇のきくを折
宮川のほとりへ酒送せられて
重箱に花なき時の野菊哉
みちとせのもゝの名におふきくの笆
  にとよみけるにおもひよりて
いかて我七百の師走菊にへん
  竹苑のやことなきたねを
   うつし奉りて花奇なるを
出世者の一もとゆかしつくり菊
翁さひ菊の交むに任せたり
時服蔵菊には菊の笆哉
  十日菊
観世殿十日の菊をかねてより
  女子をねかひて
   まふけたる人に
かに屎にうつろふ花の妹哉
  十日菊
震宴の残りもかもな菊膾
笠きたる西行の図に
菊を着てわらちさなから芳しや
  袖の浦といふ貝つくしに
白菊を貝の実にせん袖の浦
   那波屋九郎左衛門かさかつき也
御遷宮の良材とも拝奉りて
大工達の久しき顔や神の秋
  御斎にまふて奉りて
御穂を取て髪あるまねのかさし哉
  内宮  法体の遠拝なるに
身の秋や赤子もまいる神路山
  外宮
日は晴て古殿は霧のかゝみ哉
いつれも_わか身はゝかり
   あるゆへに申侍る也
太々や小判ならへて菊の花
  雲津川にて
花すゝき祭主の輿を送りけり
  冠里公御わたまし祝奉て
初雁や台は場はれて百足持
  周信か瓢の画に
白露も一升入のめくみ哉

  平家の衰を語るに
かへり来て福原淋しうつら立
元禄辛未のとし大山榎島へ参詣
  品川 紀行前書略之
品河もつれにめつらし雁の声
  とつか
稲塚の戸塚につゝく田守哉
藤沢
宿とりて東を問やくれの月
  いせ原
よこ雲や離_の蕎麦畠
  御向松にて
生栗を握つめたる山路哉
  大山
腰押やかゝる岩根の下もみち
  石蔵寺対僧
手に提し茶瓶やさめて苔の露
  二間茶屋にて
白馬の尾髪吹とるすゝき哉
  由井かはま
朝霧に一の鳥居や波のおと
  雪の下にやとりて
砧うつ宿の庭子や茶の給仕
  鶴岡左の古樹のもとにて
有し代の供奉の扇やちる銀杏
  横几追悼
一鍬を手向にとるや新糀
  酒もる詞を切題にして各
  一字を探る中に間を
あいせはや夜寒さこその空寐入
  自画雁
片足はやつし候也小田の雁
秋のくれ祖父のふくり見てのみそ
白扇倒懸東海天といへる句
つね此いたゝきに対して手に
にきりたる心ちせらるこのあした
雲霧立おほひて山の半腹より
見わたされたるを要よりすそと
いはんも後句なりとて
白雲の西に行衛や普賢富士
  未暁吟
鐘つきよ階子に立てみる菊は
  洞房の茶屋孚兄生前笛を
  好けるかうせたるを悼て
とふらへや笛の為には塗足屐
  悼朝叟
此人に二百十日はあれすして
  吉田氏
唐秬も糸をたれたる手向哉

 

参考文献
昭和56年.桜楓社刊.今泉準一著『五元集の研究』
平成8年.春秋社刊.今泉準一著『其角と芭蕉と』
平成6年.勉誠社刊『宝井其角全集』

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