近未来連句交流大会【NPO法人俳句&連句と其角主催】


互選による第一次選考通過作品15巻と大会賞 ・・応募総数9グループ40巻
●大会賞第一位 非懐紙「萩桔梗」大住連
●大会賞第二位 非懐紙「二百二十日」詩あきんど
●大会賞第三位 非懐紙「ぬうと出て」いくり座
●大会賞第三位 さざんが「説破せり」UFO


●大会賞第一位 五吟非懐紙十八句「萩桔梗」游の会
天平にもどらでなんの萩桔梗            中根明美
 鴎鳴かせて月の袖網               高室静州
リルケ読む熊野岬回秋果てて            神戸よう
 デジカメ使いアニメ撮りする           竹村半掃
待ち兼ねのオペラシティの幕揚がり         中澤京子
 ぴたりときまる革のボウタイ             静州
未知数をXとして君に会ふ               半掃
 ひとよひとよに太る若虫                美
リヤカーに乗せた小豚が遁走し              う
 ワイングラスに雪がちらちら              子
凍月を竹籠に嵌め誰もゐず                掃
 電池の切れた柱の時計                 う
凡人で上等だよと見栄を張り               州
 寝転んで居る山の神様                 美
大漁の水揚げすずと船を寄せ               子
 北へ傾く畑の麦踏み                  う
軍さなき七十年の花仰ぎ                 掃
 春のなごりに尋ね琴の緒                子
                首尾・平成二七年八月一日
《推薦の弁》
「非懐紙」という連句形式は橋フ石が昭和26年刊行の句集『雪』に「新形式」として発表したもので、まだ「非懐紙」というネーミングはなかったようだ。受賞作は発句からの秋3句に「月」を、11句目に「冬月」を、16句目からの春3句に「花」を詠み、一花二月の半歌仙と変わるところがない。しかし、第三「リルケ読む熊野岬回(くまのみさきみ)秋果てて」と、歌仙ならば表六句に固有名詞を詠まない禁忌を破りながら、初折・表面・裏面といった形式主義にとらわれず「巻く」という連句の本来性へ帰った点を評価致します。
●大会賞第二位 六吟非懐紙「二百二十日」詩あきんど
生キ死ニを申さば二百二十日かな         二上貴夫
 扉の開く音の冷やか              石川桃瑪
青けむり鞄につめた山羊の歌           中尾美琳
 すしざんまいに半時ならぶ          大塚五十六
下町の名産店に目を凝らし            竹村半掃
 仙人掌菊に噂あつまる                貴
竹婦人抱く独り寝の大男                瑪
 リビドー充ちる砂浜の石            松本野著
中年の恋に美学は危ういと               六
 天国行きは廃線になり                琳
ダンテより神聖喜劇幕閉じず              著
 曲がった指でスマホつま弾き             掃
容体は悲観性ノン飛蚊症                貴
 雨だれのなか響くさえずり              瑪
ふわふわとポプラの絮の北大に             琳
 霞を俯瞰ハングライダー               六
山彦の声をたよりに山河ゆく              掃
 ものみな白し日光写真                著
          平成27年9月11日 あつぎアミュー
《推薦の弁》
橋フ石が「非懐紙」をもって世に連句を問うたのは、昭和60(1985)年発足の「大阪連句研究会」から1992年に亡くなるまでの7年間であったと考えられる。その問題意識は、歌仙の「折」や「面」や「定座」といった形式を拭い去って、鳥獣戯画などに見られる伝統的な絵巻物形式を範に、付け味本位の連句を目指したことにある。受賞作は三句の渡りの面白さが随所にあり、付け味本位な「非懐紙」の可能性を示した点を評価致します。
●大会賞第三位 独吟さざんが「説破せり」UFO
 1面
作麼生をしたり顔して説破せり          矢崎硯水
 鞄ひとつで犬連れの旅               〃
赫赫とピサの斜塔へ日は落ちて            〃
 2面
酒場のドアを肩でぐい押し              〃
 詩神へと言辞捧げる詩あきんど           〃
はるか潮路の果ては羊水               〃
 3面
高台の画家とモデルの鬩ぎ合い            〃
 一線越えず一糸まとわず              〃
あめつちを意識するとき無尽蔵            〃
               2015年9月19日満尾
《推薦の弁》
「さざんが」は、十二句連句の「賜餐」が3句4連で、これより短い形式は不可能と思っておりましたが、それを破っての3句3連です。それを可能にしたのが、1巻9句に季語という要件を外して無季による長句と短句との交叉に詩情をさぐろうとした点でありましょう。また、現代連句にややとも嫌われる独吟に、3句3連の短さが可能性を開いた点も加味し、新形式としての文芸的価値を評価致します。
●大会賞第三位 両吟非懐紙十八句「ぬうと出て」いくり座
ぬうと出て蘇鉄の花の黄金かな         石川桃瑪
 連絡船を降りる帰省子            松本野著
妙齢のモデルはうわさ頻りにて            瑪
 大谷崎の腹は分からず               著
引力はまだ働かず青ぎんなん             瑪
 色なき風にいのち非いのち             著
睦言のはじめは遥か幼稚園              瑪
 見舞籠ある妻の枕辺                著
寝て起きて窓から見える片時雨            瑪
 寒月の辻おでん売る茶屋              〃
因縁の大道を行く八犬士               著
 村騒動の動き不穏に                瑪
永田町ことばのむくろ飛び回り            著
 ずり落ちそうな夕日輝く              瑪
海鳴りの聞こえる庭に花篝              著
 物言いたげな若駒の顔               瑪
逃水を追ってタケルは東へ              著
 万物のかげそぞろ靡ける              瑪
        文音・平成二十七年九月十三日〜二十四日
《推薦の弁》
「半歌仙」が18句完であるのに対して「非懐紙」は句数を定めず20句前後を目安としています。この句数は一目見て鑑賞できる長さという理由ですが、いっぽう、何句であっても序破急の波動の美は不可欠でしょう。受賞作は「大谷崎」「永田町」「タケル」といった固有名詞の配置に難点が感じられますが、発句「植物の花」、10句目「寒月」と15句目「花篝」、挙句「雑」と、序破急の構成に工夫がみられた点を評価致します。
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