平成20年(2008)10月7日、神奈川県庁より認可されて(設立当初の名称は「特定非営利活動法人其角座継承會」)NPO法人を設立することが出来ました。どうしてNPO法人を必要としたのかについては、TOPページ「なぜNPO法人を設立したのか」のメッセージ(1)をお読み頂ければと存じますが、NPO法人設立の専門的な知歯もないまま、或る行政書士事務所へ相談に行きました。そこで約1時間の説明を受けたのですが、では初回相談料5千円ですが良いですねと念を押され、設立までにどのくらいの費用が掛かるのかと尋ねると、大体25万円くらいを見ておいて下さいとの返事。→ →



経済や法律のことは苦手  → 帰りの道々、25万円を払って設立代行してもらうのと、素人ながら手続きを自分でやるのとではどちらが良いのか考えていました。 結局、NPO法人設立のためのガイド本を購入して自分で書類を作成し、神奈川県庁へ提出に行ったのですが、書類記載不備で2度ならず3度4度通い受理される始末。ようやく認可が下り、次に法務局へ法人手続きに行ったのですが、ここでも書類不備で1度では通りませんでした。そもそもわたくし共は文芸の集まりですから、経済や法律のことは苦手なのです。

 ミッション

本NPO法人のレーゾンデートル ともかく、オフィシャルな権威が欲しいという気持ちだけでNPO法人を設立した訳ですが、内部からもNPO法人をやるメリットは何かあるのかという疑問をたびたびぶつけられました。つまり、わたくし共に限って言えば、経営上のあるいは経済上のメリットはほとんどないのです。もし何かメリットがあるとすれば、NPO法人を維持すること自体にレーゾンデートル(raison d'être 存在価値)があると考えるほかないのです。この点について、以下お話ししましょう。

ひと言でいえば、他が出来ないものを抱えてしまったからとでも言えば良いのでしょうか。TOPページ「其角を読もう」のメッセージ(3)に述べましたように、偶々の機縁から宝井其角300回忌を修し其角研究の問題点を覗いてしまったために、今日の俳文芸の在り方について、次の2点に気づくことになりました。

(一)「蕉門研究」の側からの其角評価は、果たして正しいのだろうか。
(二)「俳諧から俳句へ」というスローガンは、果たして日本文化にとって有益なのだろうか。

なぜ学会も含めて世間が其角を評価しなくなったのかという点について考えてみますと、明治以降の近代化に伴って俳文芸の枠組みがおおきく変わり、江戸的な「俳諧というジャンル」を現代人が理解し得なくなったということが挙げられます。俳文芸という枠で其角を見てみますと、世間は其角の「発句」ばかりに関心があるのですが、其角が最も才能を発揮したジャンルは「俳文」であると考えることが出来ます。今日、江戸の「俳文」は変貌をとげ、虚子の「ホトトギス」提唱の「写生文」や「俳句とエッセー」というジャンルに変わりました。
其角の書いた「俳文」というと「猿蓑集序」や「早船の記」や『類柑子文集』などになりますが、ところが、ほとんどの俳人が其角を読んでいないのが事実で、それに加えて「俳文」というと、どうしても芭蕉の名文「幻住庵の記」や「奥の細道」ということになりますので、それとは筆致も思想も異なる其角の「俳文」は読み難いので読んでいないということになるのでしょう。つまり、評価の基準はあくまで芭蕉の思想であり、旧来の『三冊子』『去来抄』といった「蕉門研究」の側から其角を評価する訳で、これでは其角は読めないのです。

明治以降、世の価値観が「座の文芸」より「個の文芸」へと変わり、これを「俳諧から俳句へ」と呼びます。すなわち、江戸の俳諧というジャンルは解体され、現代は俳句、川柳、連句、随筆、へと細分化されています。江戸の浮世絵が顧みられなくなったように、西欧の自然主義文学や写実主義の技法が評価され、おかしみや俳味(フモール)やパロディといった表現は非文学的なものとされ、連句についても没個性的として時代に捨てられていったのです。
近代は個我の目覚めがテーマであり、確かに「俳諧から俳句へ」は、時代の趨勢であるのはその通りだと思います。しかし、現代は近代の反省の上に成り立つのであって、近代的自我の確立といった価値観によって忘れ去られていた江戸俳諧にある「共生の文芸」というテーマを、再評価しても良いのではないでしょうか。
俳諧のルーツである連歌は茶の湯よりも古く、千利休に影響を与えた武野紹鴎は連歌の精神をヒントに茶の湯を考案したと言われており、日本文化の伝統を知る際に連歌はなくてはならないものです。すなわち、江戸時代に「連歌百韻」をアレンジしてその略式の「歌仙」という形式が創られたように、現代は連歌の略式として成立した「歌仙」をアレンジして、今日の時代の世界観・言語観にふさわしい連句形式と句会(座)のやり方が創案されなくてはならない時代に差し掛かっているのではないでしょうか。具体的には、いまは俳句と連句とは別々の文芸ジャンルとして、別々に句会が行われています。しかし、わたくし共は同じ場で同じ時間帯に俳句と連句を行う句会形式を模索しており、そのための連句形式に句数を定めない「非懐紙」を採用し、また「点盛り」といった点数を競う俳句会ではなく「共生感覚」をまなぶ「場」へと変換したいと考えております。

さて、上記の問いを抱えて世の中を見渡してみますと、どこにもわたくし共と似たテーマを持ったグループもありません。やむ方なくオリジナルに試行錯誤して、ここにレーゾンデートルを見いだし新しいスタイルのNPO法人を構築していこうというのが、結論です。平成以降の時代の空気は「共生の文芸」のリバイバル(江戸文芸の可能性)を指しているのではないでしょうか。わたくし共のミッションは単なる俳句団体や連句団体に止まるのではなく、江戸からの四百年の伝統の延長に俳文芸を構想して見たいのです。
パブリック度を高めたNPO法人へ 本NPO法人は設立以来、収益事業を行わず、役員報酬ナシ、運営維持費を正会員よりの年会費と理事の寄付によって賄って来ました。しかし、このスタイルは市民に根ざしたNPO法人という理想にほど遠いものなのです。理事の寄付にたよっての財政は、ボランティア団体のような運営形態になってしまいます。そもそもNPO法人とは、国や行政機関のサービスが届かない様々な分野で、市民の自主的な活動を保障するためのオフィシャルな団体なのです。すなわち、わたくし共もその理想型である、市民のための市民による市民に支えられた、営利を目的としない「Nonprofit Organization」を目標にしていかなければならないのは言うまでもありません。

或る法人をはかる尺度にPST(パブリック・サポート・テスト)という基準があります。PSTとはNPO法人が広く一般から支持されているかどうかを判断する基準ですが、NPO法人の財源は「事業収益」「会費」「助成金」「寄付金」等ですが、寄付金の割合が多いほど、寄付者の数が多いほど、公共性が高い組織であると考えるのです。たとえば、毎年3千円以上の寄付者が100人以上いる法人は、優良なNPO法人と見なされます。こうしたPSTに照らして、これまでのわたくし共NPO法人の財政を振り返ってみますと、市民に開かれた事業活動に加えて、寄付者の数が少ないためにパブリック度が高いとは言えないのです。そこで、この点をこんごの課題と考え、平成27年度より「オフィスふとまにあ」の開設、及び「終身賛助会員」制度を導入して改善に努めることにしました。

(1)地域文化への貢献を目差して「オフィスふとまにあ」を、2015年4月1日開設しました。これまで、NPO法人の事務所を会長宅に置き事務所経費を節約して来ました。これを改善し、一般市民の方々が参加できる場でありNPO法人の拠点としての事務所を開設しました。具体的には、地域市民参加の「句会」や「パソコン教室」、丹沢アートフェスティバルへの参加、俳誌「詩あきんど」編集会議などで使用しております。
(2)平成27年度より「終身賛助会員」制度を導入致しました。ミッションを支持して下さる「賛助会員」の皆さまへ、本NPO法人よりの情報を継続的に受け取った頂くために、賛助会員の方で3千円以上の寄付をしてくださった方は「終身賛助会員」になることが出来る制度です。現在、本NPO法人のメイン事業として、毎年4月に伊勢原市上行寺での「晋翁忌」と伊勢原市観光協会に後援頂いて「宝井其角俳句大会」を開催しております。この事業はわたくし共のミッションを世につたえる重要なイベントですが、さらにミッションのメッセンジャーとして働いてくださる「終身賛助会員」を募っていきたいと考えております。
ところで、ミッションはひろく分かり易くつたえられなくてはなりません。本NPO法人の情報提供事業として、画像配信のできるメールマガジンの発行や一般市民へのフリーペーパーの配布を必要としておりますが、紙の印刷物はお金が掛かります。そこで平成27年度より、会員向けオフィシャル・メールマガジンの配信(インターネット環境のない会員へは切手代実費にてメルマガのコピーを郵送)に取り組んでおり、こんご、このメルマガを一般市民向けの発行にして行かなくてはと考えております。

終身賛助会員と寄付のお願い 以上、わたくし共のミッションが世の中に理解され支持される日を信じて、市民の皆さまの「NPO法人俳句&連句と其角」へのご支援と参加をお願い申し上げる次第です。まず、賛助会員(本ホームページの「組織」の賛助会員の特典をご覧ください)になって頂き、また、寄付行為を通して財政を支えて頂きたく存じます。皆さんと共に、パブリック度を高めたNPO法人へ成長していこうと存じます。NPO法人ハイクアンドレンクにご期待ください。(2015.9.9 理事長記す)